溶融亜鉛めっきとは
溶融亜鉛めっきは、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸漬し、表面に亜鉛皮膜を形成する技術です。橋梁、鉄骨、ガードレール、照明柱、鉄筋棒などあらゆる分野で利用されています。数十年の防食性をもち、防食寿命が続く限り原則メンテナンスはいりません。メンテナンスに時間が取れない場所には溶融亜鉛めっきが有効になります。
溶融亜鉛めっきの特徴
■溶融亜鉛めっきの耐食性について
□保護皮膜作用
溶融亜鉛めっき皮膜は、大気中の酸素、二酸化炭素、水分等と反応し、表面に腐食生成物を形成させます。この腐食生成物はやがて薄く緻密な不働態皮膜となり、亜鉛めっきの減耗をさらに低下させます。
□犠牲防食作用
めっき皮膜が、外部要因などにより局部的に欠損し、鉄が露出したとしても、周辺の亜鉛が陽イオンとなって鉄の腐食を抑制し、電気化学的に鉄を保護します。
□溶融亜鉛めっきの耐用年数
大気中の耐用年数については、使用環境による亜鉛の腐食速度と、亜鉛の付着量から次の式のように計算できます。
日本における使用環境別の亜鉛の平均腐食速度と耐用年数は下表になります。
■溶融亜鉛めっきの密着性について
溶融亜鉛めっきは、亜鉛と鉄から形成される「合金層」により亜鉛と鉄が強く金属結合しているため、通常の取り扱いでは剥がれることはありません。
■溶融亜鉛めっきの均一性について
めっき液に浸漬することで、複雑な構造も均一にめっきできます。
■溶融亜鉛めっきの経済性について
防食費用には、【初期費用】と【維持費用】の2種類があります。溶融亜鉛めっきの特徴として、防食寿命が非常に長く、その期間中は維持費用を原則必要としないことです。初期費用が溶融亜鉛めっきよりも安価な表面処理がありますが、それらの表面処理は比較的短期間に防食能力がなくなるために維持費用がかかり、合計費用では溶融亜鉛めっきより高価になります。このことから溶融亜鉛めっきは経済性に優れた表面処理であると言えます。
溶融亜鉛めっきの種類の記号と膜厚
JIS H 8641:2021
電気亜鉛めっきとの違い
溶融亜鉛めっきと電気亜鉛めっきを比較すると、溶融亜鉛めっきの方が亜鉛皮膜を厚くすることができるため、より耐食性を高めることができます。一方で膜厚を精密にコントロールすることは苦手なので、寸法精度を要する部品などには適していません。溶融亜鉛めっきは高い防食性能から、面積の大きなもの、重量のある構造材などに最も適した表面処理と言えます。溶融亜鉛めっきか電気亜鉛めっきにするかは、用途に応じて選択するといいでしょう。どちらにするか迷うようなときは、お気軽にご相談ください。
溶融亜鉛めっきする材料へのお願い
密閉構造のものは浮力が働いて浸漬が困難となります。また、加工が高温で行われるため、閉じ込められた空気・水分が膨張し、爆発する恐れもあります。適切な位置に亜鉛の流入・流出する開口部や空気抜きを設けるようにお願いいたします。また、形鋼類やパイプによる加工品などの場合、空気だまりが生じ、不めっきや亜鉛だまりとなることがあります。適切な位置にスカラップや孔が必要となりますので、ご配慮頂きますようお願いいたします。ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。